ヒートマップとは、ホームページのクリック位置などを測定して、ページ上に色で重ね合わせて表示するビジュアルなグラフのこと。多くクリックされる場所ほど赤い色で表示されるため、誰でもユーザーが何を見たいと思っているか、どこまでスクロールしているか分かりやすい表現となります。
ヒートマップという言葉はもともと一般名詞で、気温データを地図に示すなどしたもの。これがホームページの世界に導入されて、アクセス解析のビジュアルな一分野となっています。
ツールも多く、普段ホームページに携わっていない役員や事業部の人たちにも分かりやすいことから人気があります。
ただ、基本的には説明なしに「絵」が提示されるので、そこから何を読み取るかは練習が必要となります。多くの人はユーザーの動きの面白さを感じますが、そこから改善に結びつけるのは難しいということになります。ヒートマップを導入していても、その結果を見て「ふーん」で終わってしまっているということが多いのが実際です。
そこで、ここではヒートマップをいかに読み取って、どう改善に結びつけるかについて解説していきましょう。
ヒートマップの見所
●どこがクリックされて「いない」か?
ヒートマップの面白さはどこがクリックされているかが一目瞭然に分かること。しかし、その面白さに目を奪われていては何も読み取ることができなくなります。
多くのページでは、クリックの多いポイントは「クリックが多いだろう」と誰もが思う主要ボタンに集中します。だからひと目見ただけでは「まあ、当たり前の結果だな」と感じるわけです。しかしそれでは改善点が出てきません。
注目するべきは、「クリックしてほしいのにクリックされていないリンク」です。このボタンをクリックさせたい、と思っているボタンをページのプリントアウトの上に印をつけて手元に置いてからヒートマップを見てみましょう。そうすると、重要なのに期待しているほどクリックされていないボタンが見えてきます。
一般的には訪問者は目に付きやすい場所でクリックをします。重要なボタンがクリックされていない場合は、ボタンが目に付きにくいエリアにあるか、表現が目立たないかの可能性が高いので、ボタンを移動したり、表現を変えてもう少し目立つようにします。
もう1つ考えておくべきなのは「選ばせる」こと。訪問者は自由にホームページを見て回りたいので1つだけのボタンで「これをクリックせよ」と迫られることは嫌いです。2つか3つのボタンをセットで用意して選ばせるようにすると、「どれにしようか」という気持ちが生まれて、全体として目立つこともあってクリック率が高まります。
バナーボタンの場合、クリックされにくいのは「広告っぽすぎる」というケースも少なくありません。訪問者は宣伝に乗せられるのが嫌いです。表現を少し地味にして成功したバナーは少なくありません。
また、「エントリー」という採用では重要なボタンの文言を「会社を見学したい」という文言に変えて成功した例もあります。
クリックさせたいと会社側が願うボタンが避けられている場合にはこうした可能性を検討して変えていきましょう。
●分類して差分を見る
これまでのヒートマップで難しかったのは、同じページで別の条件で複数のヒートマップを作成して並べ見比べることです。
例えばあるページを変更した場合には、変更前と変更後でクリック位置がどう変わったかを測定すれば、変更の意図がうまく実現されているか誰にでも分かるでしょう。PDCAサイクルという考え方の中にヒートマップを組み込めば実に有効な検証を行うことができます。「もっとこのボタンがクリックされるようにもう少し調整しよう」→「ほら、良くなった!」とヒートマップを元にサイクルを回していけばホームページでの訪問者誘導は非常にうまくいきます。
また、訪問者を資料請求フォームを送信完了した人と、資料請求しなかった人に二分してみましょう。トップページや製品情報トップ、主要な入口ページなどで、この2つのヒートマップを見比べれば、その人たちの関心の違いがはっきりします。後者はただ知識が欲しいだけかもしれません。ヒートマップにそれが違いとなって現れます。
例えばトップページを「資料請求した/しなかった」で二分したヒートマップにしても、あまり違いが分からない場合もあります。とすればそれはトップから移動したあとで分化するのですから、トップページでクリックの多いページにヒートマップをしかけて観察しましょう。1つのゴールに向かう人の行動を特定するのに、5ページずつヒートマップをしかけて2週間ずつ測定すれば2ヶ月で20ページ見ることができるのですから、その中で必ず決定的な違いを発見することができるでしょう。
何を見た人がゴールへ向かったかがはっきりすれば、
(1)そのコンテンツを拡充する
(2)トップなどでそのコンテンツを目立たせる
(3)そのコンテンツに関心を持ちやすい人をより多く集客する
という順で手を打っていけば必ず成果が向上します。
(3)の、その関心に沿った集客にはリスティング広告やSEOが好適です。SEOとは漫然と「重要キーワードでの順位を上げる」ことではなく、ゴールに到達しやすい人をピンポイントで増やすために行うのです。その方がはるかにコストパフォーマンスが高く、結果がついてきます。
このような二分法でのヒートマップ活用は、「CSRを見た人/見なかった人」などホームページ運営の狙いに照らして、順番に検証していきましょう。
全部のページにヒートマップツールを設定したまま放置、たまにマップを見るのはトップページなどの主要ページばかり、といった状態ではせっかくのヒートマップが十分役に立ちません。
●クリックされるべきでない要素に注意
ヒートマップで検証したい項目のもう1点は、クリックされるはずのないものがクリックされていないか? 例えば多くのページで、リンクにもなっていない見出しや画像が非常に多くクリックされています。これは訪問者がその内容について詳しく見たいと思っていることの現われであり、決して見逃してはならないポイントです。
改善作業としては、
(1)クリックされている見出しや画像の表現を変えてクリックされないようにする
(2)クリックされるべきリンクを目立たせてそちらがクリックされるようにする
(3)見出しや画像にもリンクを設定する
ことが考えられます。
単純に(3)のようにリンクを設定してしまえば、問題の大半は片付くのですが、本当の解決にはなりません。なぜなら、
(A)なぜ訪問者が見出しや画像をクリックしていたのか、の答えが出ていない
(B)ノウハウが残らないので次に作るページがより良くならない
ということになります。
見出しをクリックしていたのはその内容が魅力的だったからかもしれません。そうだとすればただリンクするのでなく、その見出しに率いられるコンテンツを強化すべきです。
写真がクリックされているのは、もっとよく見たいからでしょう。拡大写真を見られるようにしたり、もっと多くの画像、動画を置いてニーズに応えるべきです。
●同じ移動先へのリンクに着目
大切なリンクは、同じページに何箇所か設置されていることが少なくありません。ページの上部、左ナビゲーション、本文中、フッタ内と4箇所ぐらい設置されていることも考えられます。
アクセス解析では設定を加えないと同じページへの移動としてまとめられてしまいますが、ヒートマップならどの位置のリンクがよくクリックされているか、何の仕掛けもなく一目瞭然となります。
かつてはページ上部のリンクばかりクリックされていましたが、最近ではかなりページ下部のリンクがクリックされるようになりました。こうしたポイントに注目してヒートマップを見て、よくクリックされる位置に重要なリンクを移していきましょう。
●ページ内リンクのページは注目!
ヒートマップで調べたいのは、「よくあるご質問」などのページです。質問の一覧からクリックするとページ内リンクで回答が表示される形式は、一般的にアクセス解析してもどの質問がクリックされているか分からないことが多いのです。
これは非常にもったいないことで、訪問者がどんな情報を求めているかが一番良く分かるのがこのコーナーですから、そこで関心をつきとめ、その情報をもっとサイトに掲載するべきです。むしろ「よくあるご質問」は「次にどんな情報を掲載すべきか」を調査するために作成しているコーナーだと言っても過言ではありません。
にもかかわらず、ページ内リンクにしてデータがとれない状態になっているサイトが多いのは残念なことです。
本来はすぐにページを分けるか、解析ツールに特別な設定を加えて、どの質問が多くクリックされているか測定すると良いのですが、それに変わる方法として、ヒートマップがあります。これはビジュアルでどの質問が多くクリックされているかが見られるので、社内にフィードバックすると非常に高いインパクトのある報告が可能です。